堀口和彦 著、光和堂 発行
◆ 1.筋肉・靭帯による腰痛 もっとも多い腰痛の原因は、筋肉の疲労です。背中から腰の筋肉(脊柱起立筋)は、臥時以外は上 体が倒れないように常に働いています。この筋肉が、凝り硬くなり重だるい鈍痛を発するのが、筋疲 労性腰痛あるいは姿勢性腰痛です。このような状態の中で、重い物を持ったり腰を捻ったりして、筋 肉を傷めてしまうのが、筋・筋膜性腰痛です。さらに靭帯まで傷めてしまうのが、椎間関節性腰痛、 いわゆるギックリ腰です。靭帯とは、骨と骨を繋ぎ留めている硬い結合組織です。 筋疲労性腰痛 は、筋肉はまだ傷ついていないので、治り易いのですが、筋肉疲労の原因とな る過 度の腰への負担や悪い姿勢を改善し、背筋や腹筋を徐々に強化しなければ、また再発します。痛みは 1回の治療でかなり取れます。全治には2〜3回の治療で、およそ2週間かかります。予防には、日 頃のストレッチや体操が効果的です。 筋・筋膜性腰痛 では、腰を支える筋肉が損傷を受けているのですから、筋線維を再生する必要 があ ります。痛みが強い場合は、安静にして筋肉を十分に休める必要があります。患部には湿布をし、足 先が冷たくなっていたら、足を温めてください。腰痛で来院される方は、このレベルが多いです。筋 肉を傷める前に来て欲しいのですが…。治療は5〜8回必要です。全治には、3〜4週間かかります。 椎間関節性腰痛(ギックリ腰) では、起きることも歩くことも出来ない程の痛みを伴います。 こ のような場合は、最低3日間は絶対安静にしてくだい。動作だけでなく、くしゃみや咳などで腰に力 が入るだけで激痛が走ります。やはり、患部に湿布をし、足先が冷たくなっていたら、足を温めてく ださい。治療は安静後、多少動けるようになってから行います。治療は5〜8回で、全治には3〜4 週間かかります。 ◆ 2.神経・血管が関与する腰痛 このタイプの腰痛は坐骨神経痛などのように、足にも痛みが生ずるのが特徴です。坐骨神経痛は、 太ももの外側や脛に突っ張るような嫌な痛みを感じ、温めると痛みが緩和されます。また、仰向けに 寝て足をまっすぐに伸ばすと痛みが憎悪し、膝を曲げるか、横向きになり身体を丸くすると、痛みが 軽減します。その他、下肢に広がる神経には、大腿神経、外側大腿皮神経、閉鎖神経があり、太もも の前面や内側に痛みが発しますが、あまり多くは発症しません。いずれの神経も腰椎から派生してお り、腰椎付近の筋肉や血管がこれらの神経に触ったり、腰椎が変形したり、椎間板がはみ出すいわゆ る椎間板ヘルニアによって、神経に沿って痛みが発生するのです。 また、坐骨神経痛ではお尻の筋 肉が神経に絡み、痛みを引き起こす場合もあります。 治療期間は、神経を触る原因によって異なります。腰椎付近の筋肉や血管が原因の場合は、わりと 早く治ります。鍼灸による治療で、3〜5回でかなり痛みが取れます。鍼によって、絡まった筋肉と 神経を解くことができます。腰椎が変形している場合と椎間板ヘルニアによる場合は、次の項を参照 して下さい。 |
◆ 3.骨・椎間板が原因の腰痛
骨粗鬆症の高齢者に多い、腰椎の圧迫骨折による痛みは激しく、動くことができない場合が多いで
す。いわゆる腰曲りの原因です。腰を丸めて前かがみになり、なんとか歩けるようになれば治療開始
です。それまでは安静にしてください。鍼灸治療によって痛みは軽減しますが、日常生活に支障がな
い程度になるには、最低3週間は必要です。圧迫骨折とは、腰椎が潰れて、それを支えていた靱帯や
筋肉が傷つき痛みを起こします。潰れてしまった骨は治りませんが、その周りの組織が回復すれば、
痛みはなくなります。 脊柱管狭窄症 は、腰椎後部にある神経の通り道である脊柱管が変形し狭くなり、そこを通る 神経 を圧迫することによって、腰や下肢に痛みを発します。数十メートル歩きだすと、痛みと脱力を感じ 歩行困難になるが、しゃがんで休むとまた歩けるようになるのが脊柱管狭窄症の特徴です。排尿や排 便の障害を起こすこともあります。
変形性脊椎症 は、加齢によって椎間板や椎体が変形し、骨を支える靱帯が肥厚して、腰痛や
下肢
神経痛を発します。起床時や動作開始時に痛みが強いのが特徴です。 椎間板ヘルニア は、二〇才代に多く、ほとんどが四〇才以下での発症です。椎間板から髄核 がは み出し、坐骨神経を圧迫して痛みを発します。動けない程の激しい痛みで、太ももなどに知覚鈍麻を 起こすこともあります。最低三日間は絶対安静です。いくらか動けるようになったら治療開始です。 手術をする方法もありますが、鍼灸治療で治せます。 腰痛への基本的対処法
腰痛にはいろいろな原因がありますが、全ての腰痛に対する心得をまとめると次のようになります。
◎ 自分でできる即効指圧 腰痛・坐骨神経痛
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