【光和堂通信】第11号1998年春季号(Vol.3,No.3)1998.04.03
[予防と早期治療のために]

 南からの太陽の日差しが、春を連れて来ます。北風と南の太陽が争い、いよいよ 太陽が強くなってくると、冷たい北風は山の向こうの北国に帰って行き、南の太陽 がグングン地面を温めていいます。

 今年は雪の日が多かったのですが、結果はどうやら暖冬だったようで、桜の開花 は早そうです。
 春は、木が芽吹き花が咲くように、新しいことの始まりの季節です。光和堂も、 お蔭様で五月で三年になり、新たな気持ちで皆様の健康と東洋医学を考えていきた いと思います。

 ここのところマスコミをにぎわせている青少年による殺傷事件は、教育の問題か らさらに大きな社会問題に発展して来ています。次から次へと起こるナイフによる 殺傷事件の背景にある子供たちのこころはどうなのでしょうか?これらの問題は、 相手の気持ちを理解しないことが最大の原因かもしれません。
 さらに、現代社会を取り巻く環境はどうでしょうか?テレビやパソコンなど科学 技術が進歩する一方で、何か忘れてきているものがあるのではないでしょうか?便 利になる一方で、実は時間的な余裕が無くなっているようです。また、なんでも言 うことを聞いてくれるパソコンや機械たち、またリセットボタンを押せばすべて最 初から始められるゲームは、自然が本来持っている厳しさ強さや絶対性を忘れさせ てはいないでしょうか?(もちろん自然には優しさもありますが。)
 そんなことに思いを馳せると、本来、人を癒すための医療についても気になる点 が見えて来ます。機械に診察されているようで、手の温もりやふれあいのない診療 や数値で表現された健康診断などです。何か自分の体が、機械になったような気が してきます。今こそ人間味のある医療が求められているのではないでしょうか。
 「病気」という言葉があるように「気」が「病む」ことが病気であります。「気」 は、「こころ」と置き換えることができます。ですからどんな病気であっても、そ のときのこころの状態も診てくれ、多少の治療なりアドバイスなどが欲しいもので す。
 今回は、こころの病を漢方ではどのように捉えているのかを紹介します。

◆ 漢方で治すこころの病
 病気(気が病む)の発想はもともと漢方由来です。「気」という言葉は、「気に なる」とか「気を使う」など日常でも頻繁に使われます。漢方では「気」を生命の 源であるエネルギーと考えます。人間は食べ消化し、呼吸することによって、生命 エネルギーを作ります(後天の気)。また、出生によって親からこのエネルギーを 授かります(先天の気)。これらの生命エネルギーが「気」です。この気が十分に 存在し、全身に滞りなくめぐってはじめて健康な生命活動が営めます。
 こころと体は一つとみる「心身一如」の発想が、東洋医学にあります。こころの 状態が、体や行動に現れます。漢方では、こころの病は「気」が変調をきたすこと によって起こると考えています。  ここで気の病をいくつか紹介していきます。

◎気鬱(きうつ)
 気が鬱滞すると、イライラ怒りっぽくなり、カッとなり、いわゆるキレる状態に なりやすいのです。事件を起こす青少年の心境はこの状態ではないでしょうか?漢 方ではこのような気鬱の状態は肝のはたらきと関係が深いとされています。肝は現 代医学でいう肝臓のはたらき(血液浄化など)に加え、怒るといった感情を支配す るはたらきを持っています。ストレスや食生活の乱れ(不規則な食事・スナック菓 子やインスタント食品の多食)は肝に負担をかけ、ある時発症します。

◎気虚(ききょ)
 この症状は、だるい、いつも眠い、気力がない、あくびが頻繁に出るなどです。 このような気虚の状態は脾のはたらきと関係があります。漢方での脾は現代医学で いう膵臓に相当し、食べた物の消化や吸収の調整をします。脾は思慮する感情と関 係が深く、些細なことを心配したり、気にしたりすることも脾のはたらきです。

◎気逆(きぎゃく)
 冷えのぼせや動悸、めまいなどの症状で、気のめぐりが逆行して起こるものです。 このような状態では不安感が強く、何かに脅かされているような心境になります。

 春は気の病が発症しやすい時です。季節の変わり目なので気候が安定しませんし、 木が芽吹くように内なるものが発散される時でもあります。自然の一部である身体 もその影響を受け、気の巡行が変調をきたし、内なる思いが発散しやすい季節です。 自然と調和し、スポーツなどで体を動かし、汗とともにこころのモヤモヤも発散し ましょう。

 この時期に起こりやすいもう一つの病気が、肝臓に関するものです。春は肝機能 数値であるGOTやGPTが変化しやすい時です。

特集 漢方で治す肝臓病
 ——肝炎・肝機能障害——

 肝臓の病気は、肝炎や脂肪肝、肝硬変などがあります。肝炎はウイルス性とアル コール性が主なものです。ウイルス性の場合は、経口感染し一般に急性に発症する A型、血液などを通して感染するB型やC型で一般に慢性化するものなどがあげられ ます。アルコール性は過度な飲酒により肝臓がはたらき過ぎ疲労消耗し、ついには 炎症を起こしてしまうことによります。脂肪肝は太りすぎや美食により、血液中に 余った脂肪が肝臓に滞積して起こります。あまり余分に脂肪が付くと肝臓のはたら きは低下し、さらに脂肪が蓄積されるといった悪循環に陥り、動脈硬化や血栓の原 因になります。肝硬変は肝炎などが進行して、ついに肝臓が硬くなりはたらかなく なってしまいます。これは生命にかかわる事態です。このような事にならないよう に漢方の知恵をもって、早めに対処していきましょう。
 肝臓は「物言わぬ臓器」と呼ばれ、自覚症状が出にくく、出たときにはかなり病 変が進行していると言われますが、漢方特有の「未病を治す」(病気になる前に治 してしまうこと)の発想で心身をみれば多くの兆候が必ず見つかります。
 先の項で少し話したように、漢方では感情と臓器は深い関係があると考えます。 ちょっとしたことでイライラしたり怒ったりするのは、肝のはたらきに原因がある と捉えます。また、漢方の古い文献に「肝は血を蔵する」とあり、肝は血液を蓄え 解毒し成分を調整し、生命活動を維持する上でたいへん重要なはたらきをしている とあります。

まさに「肝腎」な臓器です。(この言葉も漢方由来です。「肝心」の 方が見慣れているかもしれませんが、漢方では「心」より「腎」を重視します。) さらに、肝は目や筋とも深い関係があります。

◎ 自分でできる即効指圧 その11
 肝臓・胆のう

肝炎 ……両肋骨の下にある期門付近を両手で肋骨の下へ揉むように指圧します。 お酒を飲む前によく揉むと悪酔いをしません。(池波正太郎氏も実践していた。) 胆石 ……背中にある肝兪、胆兪を指圧します。
*只今柳のツボ押し棒(健康とそば打ちの達人河野氏作)を差し上げています
 次の項目は東洋医学からみた肝臓のお疲れ信号です。
1.疲れがなかなか取れずだるい。
2.肩が凝る。
3.背中が張る、腰が重い。
4.目が疲れ充血しやすい。
5.白目が黄色い。
6.体が熱っぽい、微熱がある。
7.脇腹が張るようで押すと痛い。
 症状の現れにくい肝臓の病気ですが、以上のような項目からチェックしていくと肝 臓病の治療で大切な早期発見につながります。
民間薬 その3
 鬱金
(ウコンまたはターメリック)
アルコール好きで肝機能数値が気になる方。胆石・脂肪肝に。胃炎・胃潰瘍にも。

   《お知らせ》
 やっと本が出来ました。『パプアニューギニアの薬草文化』日大生物資源科学部 双書/アボック社


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