西暦二○○○年を迎えました。二○○○年の年 神様は、五穀豊饒と国家安泰をもたらしてくれる でしようか。 　日本の伝統習慣では、正月には年神様を祀りま す。しめ飾り、門松、鏡餅などは年神様を迎える ためのものです。また、お年玉とは本来年神様の 依り代である餅など供物のことでした。それを司 祭者である家長が家族に分け与えたのです。そし て、それを食べることによって、一年の鋭気を養っ たのです。 　数え年の発想は、お年玉をもらった数に相応し ているようです。お年玉をもらい一つ年を重ねる。 ですから、お正月は皆の誕生日を祝うような喜び もあったのでしょう。古くは、自分の誕生日を正 確に知る人は少なく、あまり誕生日を祝う習慣は なかったのでしょう。また、節分に年齢の数豆を 食べる習慣も、数え年の発想と深い関係があるよ うです。 　ハプアニューギニアでは、現在もいわゆる数え 年を利用しています。戸籍や国勢調査が行き届か ないため、誕生日を知らない人がたくさんいます。 ですから、彼らは自分の年齢を何回クリスマスを 迎えたかによって答えます。（実はパプアニュー ギニアではほとんどの人がキリスト教徒です。） 現地語での年齢の尋ね方を直訳すると、「あなた のクリスマスは何回ですか？」となります。 　長寿と長命という言葉が、しばしば引き合いに 出されます。この年神様の信仰によれば、長生き することは、それだけたくさん年神様の御利益を 授かっていることで、お年寄りは徳があり偉い人 なのです。長寿とは、ただ長く生きているだけで なく、この徳を積んでいくことなのでしょう。 　　　◇　　　　　　◇　　　　　◇ 介護保険の申請 　が昨年の１０月より始 まり、多くの方がすでに、介護認定の審査を受け ています。この審査とは、申請された高齢者の身 体や精神的状態、生活状況から、どのくらい介護 が必要であるかを判定することです。

審査を通して感じることは、申請された高齢者 が三つも四つも病気を持ている方が多いことです。 漢方の歴史その一、　　　「黄帝」 　中国医学の成立と伝承 　およそ三千年前に発生した中国医学は、二千 年前には今日に伝わる医学書や薬物書が編纂さ れ、その原型が完成しました。医学理論と誠灸 術が記された「黄帝内経（こうていだいけい）」は、前 漢末から後漢初のニ千年前には編纂され完成し ました。薬物書である「神農本草経（しんのうほんぞ うきょう）」と漢方薬の運用法を記した「傷寒雑病 論（しょうかんざつびょうろん）」は千八百年前には完成し ていました。これらの書物は、その後代々受け 継がれながら、それを実証しさらにその時代の 経験ゃ知識を加味し、そして後世に伝えていく ことにより、今日まで伝わっているのです。続 中でも、脳梗塞、老人性痴呆症、。パーキンソン病、 廃用症候群などが目につきます。脳梗塞は、半身 の麻痺をもたらし、身体の自由を制限し、日常生 活にも支障をきたしている場合が多いようです。 痴呆症は、予想以上に多くの方が患っているのに 驚きました。身体が丈夫で痴呆症に罹っている方 は、身体的には介護の必要性は少ないのですが、 徘徊や暴力など問題行動を起こす例もあり、介護 する方の負担は、場合によっては寝たきりの方の 介護のように重く苦労が多いようです。 　脳梗塞と痴呆症については、すでに特集を組み 取り上げていますので、今回はパーキンソン病と 廃用症候群について紹介したいと思います。 特集パーキンソン病 　パーキンソンとはこの病気を最初に報告したイ ギリスのお医者さんの名前です。手の振るえ、肩 や腰などの筋肉の硬直、小刻みな歩行、声帯痙攣、 よだれ、さらに便秘などの症状が起こります。発 病のメカニズムは、身体の運動をつかさどる小脳 の働きが悪くなり、刺激の伝達物質であるドーパ ミンが涸れてくることによるとされています。し かし、発病の原因は詳しくは解明されていません。 バーキンソン症候群 （血管障害性・薬剤性） 　パーキンソン病に対して、パーキンソン症候群

と呼ばれるパーキンソン病に類似した病気があり ます。これは、本質的に脳がおかしくなってしま うのではなく、脳の血流が不足したり、薬の副作 用によって起こります。症状は、パーキンソン病 に似ていますが、手や腕の振るえの症状より、足 腰つまり歩行や立ち振る舞いなどに症状が強く出 るようです。また、症状の進行が速いのもその特 徴です。薬剤性パーキンソン症候群は、全パーキ ンソン症の三割とか五割というほどの報告もあり、 いずれにしても決して少なくないのです。特に、 抗精神薬や抗うつ薬、抗潰瘍薬、降圧薬などを服 用してしている方で、足がすくんだり、歩き方が 変になったら注意が必要です。しかし、素人判断 で、勝手に服薬を中止せず、まずお医者さんに相 談してください。 漢方・鍼灸とパーキンソン病 　本来のパーキンソン病を完全に治すのは、かな り難しいですが、その症状を軽減するために、鍼 灸治療はたいへん有効です。また、パーキンソン 症候群は、漢方薬と鍼灸治療で治すことができま す。鍼灸治療は、筋肉の硬直を解きほぐします。 また、漢方薬は血流を良くし、筋肉に栄養を送り、 さらに、便通や排尿の調節を助けます。西洋医学 との併用も可能で、薬による副作用を軽減させることも できます。 特集　廃用症候群 　廃用症候群とは、聞き馴れない病名だと思いま す。これは本来身体的に悪いところはないが、 高齢により家に閉じこもるようになり、さらに家 庭内での役割を失い、ますます活動量が減り、身 体的精神的に衰えてしまう病気です。これが原因 で、ねたきりあるいは準ねたきりになってしまう お年寄りが意外と多いのです。また、家の閉じこ もりは、老人性痴呆症の原因にもなります。いず れにせよ、身体を動かさないことは、筋肉、骨、 内臓の機能を低下させ、閉じこもりは、精神活動、 知的能力、神経機能を低下させます。 （座禅、瞑想などをして、 悟りを開いていれば別ですが…。）

自分でできる 　即効指圧　その一八 　　　　パーキンソン病 足萎え　太ももの外側 にある風市（ふうし）を手のひら でさするように圧します。 手の振るえ　親指 と人差し指の間にある合谷（ご うこく）と手の甲にある指の骨の 間をやや痛さを感じるぐらい 強く圧します。 民間薬　その８ 　厚朴　ホオノキ 樹皮を煎じる。整腸・腹痛・ 利尿に、さらに筋肉の緊張を 緩める作用から、パーキンソン症にも良いです。 廃用症候群をどう治す 　これは身体は悪くないのに病んでしまう、まさ に気が病む病気です。身体が、若いときのように は動かない、家族も危ないからと言って、あまり 外出させない。そのうち、外に出るのが億劫にな る。家でゴロゴロしている。これを防ぐためには、 家庭の中と近所に目分の役割を見いだすことです。 ご家族もお年寄りに何か一つでも仕事してもらい、 家族の役割を担ってもらえるよう心掛けましょう。 　　　◇　　　　　　　◇　　　　　　　◇ 　　　　　《休診のお知らせ》 １２月３０日（木）から１月４日（火）まで。新 年は５日（水）から診療致します。 　また、本年より祝日は午前の部（１０時〜１３ 時）のみの診療とさせて頂きます。 　　　　　　《あとがき》 　光和堂を盛り上げてくれる新しい仲間が入りま した。どうぞよろしく。 本年もよろしくお願いします。