光和堂通信 第24号2001年夏季号(Vol.6,No.4) 2001.07.16
[予防と早期治療のために]

 暑中お見舞い申し上げます。

 大阪での児童殺傷事件や電車内での暴力事件などと、季節的にも世相的にも、鬱陶 しい日々が続きますが、皆様元気でお過しですか? 
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 作家カミュは「異邦人」の中で、人間の不条理な行動を取り上げています。殺人の 動機を「太陽のせい」と犯人である青年は訴え、死刑を宣告されるが自分の死を幸福 に受け入れる。カミュは、不条理な行動と死をモチーフにして、生きることを表現し ているようです。太陽は生命の源であるが、同時に光と影をつくる。哲学的なのです が、凡人には人間は何をするか判らないという教訓に読めます。
 近年、心の問題が重要視されています。やはり、米国の影響が大きいと思われます が、阪神大震災以降日本でも心のケアに対する認識は確かなものとなってきました。 大阪教大池田小の子供たちに残された、心の傷の大きさは計り知れません。PTSD (心的外傷後ストレス)という専門的なことばもテレビなどマスコミで耳にするよう になりました。しかし、心理療法士や心理カウンセラーの地域への配置はまだ十分で はありませんし、一般人にとって垣根は高いように思われます。
 今回は、心の問題と関係が深い精神疾患について取り上げます。PTSDは、精神 疾患の領域では不安障害に分類されます。不安障害の中で身近なものとして、パニッ ク障害があります。今号では、まずこのパニック障害を説明します。

 ◆ パニック障害とは?
 パニック障害には、パニック発作と予期不安の二つの様相があります。息苦しさ、 動悸、発汗、めまい、手足のふるえ、立ちくらみ、胸部の圧迫感を感じ、死ぬのでは ないか、気が狂うのではないかと恐怖にとらわれます。多くの人は、この時救急車で 病院に担ぎ込まれます。ところが、検査をすると異常は見つかりません。これが、パ ニック発作です。
 もう一方の予期不安とは、一度経験したこのような不安発作に対して、また発作が 起こるのではないか心配し、極度な不安に陥ることです。この予期不安がまた不安発 作を誘発し、連鎖的に不安が不安を呼んでいきます。多くの場合、不安発作を起した 場所や状況を避けるようになり、いわゆる「外出恐怖症」や「乗り物恐怖症」などに なる人もいます。


 ◆ パニック発作
 ◎ 心臓がドキドキする。
 ◎ 汗をかく。
 ◎ 体や手足が震える。
 ◎ 体や手足がしびれる。
 ◎ 息苦しい。
 ◎ 息がつまる、窒息する。
 ◎ 胸が痛い、圧迫される。
 ◎ 吐き気、腹部のいやな感じ。
 ◎ 眩暈、ふらふらする。
 ◎ 自分が自分でない様に感じる。
 ◎ 気が変になるのではないかと思う。
 ◎ 今にも死ぬのではないかと思う。
 ◎ 寒気やほてり。
  ※四つ以上の症状が同時に起こり10分以内にピークに達する場合を「パニック 発作」という。

 ◆ 悩んでいる人は予想以上に多い!
 このようなパニック発作や予期不安に悩まされている人は、予想以上に多いのです 。一〇〇人に二?三人の割合といわれ、パニック発作発症は二〇?三〇代が多く、小学 生や六〇代の例もあります。発症には、遺伝や性格的なものが影響し、仕事に熱中し やすい、従順、素直、慎重、臆病、怖がり、自己中心的などの性格が関与するようで す。

 ◆ パニック障害は必ず治る!
 パニック発作を経験し、不安発作に悩んでいる方は、病院での検査で異常を見つけ られないため、医学的に病気であることを認めてもらえず、余計に悩んでいる人が多 いようです。しかし、適切な治療をすれば必ず治る病気です。  パニック障害発症のメカニズムは、最近の研究で脳内の神経伝達物質のバランスが 崩れ、それがさらに自律神経の働きを乱し、動悸や発汗、息苦しさなどを起すことが 解っています。
 不安をどのように止めるか、それがパニック障害の治療の最も大切なポイントです 。現代医学では、一般に抗不安薬や抗うつ薬を用いますが、これは脳に作用し、不安 を感じさせなくするものです。一度スイッチオンされた不安は、連鎖反応的に不安の 無限ループに入り込んでしまいます。このようなパニック発作の時には、抗不安薬な どはたいへん有効です。しかし、このような薬を長期間服用することはやや問題があ ります。そこで、是非とも漢方療法を試してください。


光和堂
[診療時間]午前部:10〜13時/午後部:2〜7時
      但し火・木・日曜は午前部のみ
[月曜・祝日休診]

 ◆ 漢方薬は不安発作に安全で有効!
 精神疾患も他の病気と同様に、人類誕生から人々を悩ませてきたものです。二〇〇 〇年前に完成された漢方療法にも、多くの治療法と治療経験があります。たとえば『 四逆散』は、手足が冷たく汗が滴るほど出て、息苦しさや動悸不安を感じる人によく 効きます。また、『香蘇散』は気分がすぐれず、うつ的な人によく合います。漢方薬 は、体質と症状によってお薬を選びますので、服薬前に必ずご相談ください。


 ◆ パニック発作予期不安に打
ち克つ!
(1)疲れをためない。(肉体的にも精神的にも)
(2)自分の体に自信を持つ。
(病院での検査結果に異常は無いのだから・・。)
(3)少しぐらい動悸がしても心配しない。
(誰でも、緊張すれば動悸する。)
(4)動悸や冷や汗は、体の自然な生理作用。
(5)不安が二倍になったら、無理せず逃げる。
(6)時間と行動に余裕を持つ。
(時間のゆとりは心のゆとり)
 ◆ 民間薬 その14
遠志 ヒメハギ
干したひげ根を煎じる。脳の働きを活性化し、不安神経症、ボケ痴呆症に良い。

 ◆ 夏の湿疹・かぶれ
 汗の多いこの季節、皮膚のトラブルが多い時期です。高温多湿の状況下では、汗を かいた皮膚は細菌が住みやすい環境です。あせもを放っておいたり、掻き壊すと、患 部に細菌が入り込み化膿します。また、アクセサリーやめがね、腕時計などによる皮 膚炎もこの季節に多発します。かぶれ程度ならよいのですが、アレルギー反応を起し ている場合もあります。さらに、蛾や毛虫などの接触による皮膚炎もあります。

 ◆ 自分でできる 即効指圧 その24
不安・緊張  背骨の間にある身柱(しんちゅう)と肩甲骨寄りにある神堂(しんどう)をやさし く指圧します。お灸もよい。 うつ(ぼけ防止)  頭の頂点にある百会(ひゃくえ)と手のひらにある労宮(ろうきゅう)をじっくり 指圧します。お灸も良い。

 ◆ 湿疹・かぶれ対処法
 患部が赤く痒みが強いときは、まず患部をよく冷やします。そして軟膏です。かゆ み止めの入った抗ヒスタミン剤や炎症を抑える弱いステロイド剤がよいでしょう。あ せもやかぶれには、抗ヒスタミン剤の他に、酸化亜鉛の入った軟膏がよいです。
 患部が化膿して、黄色っぽい汁が出ている場合は、まず患部を清潔にして、抗生物 質入りの軟膏とキハダ(黄柏)の入った漢方の軟膏(中黄膏)を併用して使います。

 原因が判らず、二・三週間しても治らない場合は、アレルギー性の皮膚炎の可能性 が高いです。アレルギー体質の方は要注意です。アレルギー体質の改善を含めた根本 的な治療をご希望の方は是非ご相談ください。

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    『 休診のお知らせ 』
(1) 七月二十六日(木)・二十七日(金)
(2) 八月 十一日(土)〜 十四日(火)
(3) 八月二十六日(日)〜二十八日(火)
また、七月より祝日は休診とさせて頂きます。

    『 あとがき 』
 光和堂のスタッフが代わりました。森崎君から「鈴木君 」です。どうぞよろしく。 また、今号から光和堂通信の外観が一新しました。井片 さんありがとう。


光和堂通信 第24号2001年夏季号(Vol.6,No.4) 2001.07.16
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