光和堂通信 第28号2002年秋季号(Vol.8,No.1)2002.10.20
[予防と早期治療のために]

 やっと秋らしくなって来ました。 あんなに暑い日が続いた夏には、 このまま熱帯の国になってしまう のではと、心配になりました。
 今年の4月から学校も週休2日になり、9・10月と三連休が多く、なんとなく落ち 着かない。自分の時間が取り難くなったような気がします。皆さんも平日は学校や仕事 で時間一杯、週末は家族で時間一杯ではないですか? 余裕があるような無いような。 仕事や勉強の合間のわずかな時間が、自分の時間になるはずが、それが作れないような 気がしませんか。丸一日ある休日より、そのような合間の時間の方が、いい発想が出来 たり、さっと用事が済んだりするものです。
 光和堂は月曜日がお休みなので、私にとって週休2日は無関係なのですが、家族から 来る週末休みへの圧力はさらに強くなりました。月曜日休みは、皆が「ブルー・マンデ ー」の中、一人「ラッキー・マンデー」で気分はよいのですが、私の好きな図書館や美 術館など、公共施設がほとんど休館なのです。さらに床屋も休みで、今は美容院での散 髪にすっかり慣れました。

 7月より、ご来院頂いた方の主訴別に統計を取ってみたら、やはり腰痛が一番多いこ とがはっきりしました。そこで、もう一度腰痛について整理してみたいと思います。
光 和 堂 来 院 番 付
  7月     8月     9月    
治療    腰痛   
筋肉痛
頚痛 
頭痛 
頚腕症
腰痛 
頚腕 
背痛 
肩こり
肩痛 
腰痛 
背痛 
肩こり
頚腕症
肩痛 
漢方薬 不眠  
リウマチ
頭痛  
動悸  
のど痛 
頭痛 
便秘 
神経痛
動悸 
むくみ
頭痛 
神経痛
動悸り
頚腕症
便秘 
 まず腰痛を、原因となる場所で、分類してみましょう。すると、次の三つに分類する ことができます。
 1.筋肉・靭帯 2.神経・血管 3.骨・椎間板

◆ 1.筋肉・靭帯による腰痛
 もっとも多い腰痛の原因は、筋肉の疲労です。背中から腰の筋肉(脊柱起立筋)は、 臥時以外は上体が倒れないように常に働いています。

この筋肉が、凝り硬くなり重だる い鈍痛を発するのが、筋疲労性腰痛あるいは姿勢性腰痛です。このような状態の中で、 重い物を持ったり腰を捻ったりして、筋肉を傷めてしまうのが、筋・筋膜性腰痛です。 さらに靭帯まで傷めてしまうのが、椎間関節性腰痛、いわゆるギックリ腰です。靭帯と は、骨と骨を繋ぎ留めている硬い結合組織です。

◇ 筋疲労性腰痛 は、筋肉はまだ傷ついていないので、治り易いのですが、筋肉疲労の 原因となる過度の腰への負担や悪い姿勢を改善し、背筋や腹筋を徐々に強化しなければ 、また再発します。痛みは1回の治療でかなり取れます。全治には2〜3回の治療で、 およそ2週間かかります。予防には、日頃のストレッチや体操が効果的です。

◇ 筋・筋膜性腰痛 では、腰を支える筋肉が損傷を受けているのですから、筋線維を再 生する必要があります。痛みが強い場合は、安静にし筋肉を十分に休める必要がありま す。患部には湿布をし、足先が冷たくなっていたら、足を温めてください。腰痛で来院 される方は、このレベルが多いです。筋肉を傷める前に来て欲しいのですが・・・。 治療は5〜8回必要です。全治には、3〜4週間かかります。

◇ 椎間関節性腰痛(ギックリ腰) では、起きることも歩くことも出来ない程の痛みを 伴います。このような場合は、最低3日間は絶対安静にしてくだい。動作だけでなく、 くしゃみや咳などで腰に力が入るだけで激痛が走ります。やはり、患部に湿布をし、足 先が冷たくなっていたら、足を温めてください。治療は安静後、多少動けるようになっ てから行います。治療は5〜8回で、全治には3〜4週間かかります。

◆ 2.神経・血管が関与する腰痛
 このタイプの腰痛は坐骨神経痛などのように、足にも痛みが生ずるのが特徴です。坐 骨神経痛は、太ももの外側や脛に突っ張るような嫌な痛みを感じ、温めると痛みが緩和 されます。また、仰向けに寝て足をまっすぐに伸ばすと痛みが憎悪し、膝を曲げるか、 横向きになり身体を丸くすると、痛みが軽減します。その他、下肢に広がる神経には、 大腿神経、外側大腿皮神経、閉鎖神経があり、太ももの前面や内側に痛みが発しますが 、あまり多くは発症しません。いずれの神経も腰椎から派生しており、腰椎付近の筋肉 や血管がこれらの神経に触ったり、腰椎が変形したり、椎間板がはみ出すいわゆる椎間 板ヘルニアによって、神経に沿って痛みが発生するのです。


漢方薬局  光和堂  鍼灸治療院
【受付時間】火・木・日曜は午前部のみ
午前部:10〜12時/午後部:2〜7時
【月曜・祝日休診】

◎ 漢方薬 その1
 『芍薬甘草附子湯』しゃくやくかんぞうぶしとう

激しい腰痛や坐骨神経痛に。 芍薬と甘草が筋肉の緊張を和らげ、 附子(トリカブト)が痛みを緩和します。

また、坐骨神経痛ではお尻 の筋肉が神経に絡み、痛みを引き起こす場合もあります。
 治療期間は、神経を触る原因によって異なります。腰椎付近の筋肉や血管が原因の場 合は、わりと早く治ります。鍼灸による治療で、3〜5回でかなり痛みが取れます。鍼 によって、絡まった筋肉と神経を解くことができます。腰椎が変形している場合と椎間 板ヘルニアによる場合は、次の項を参照して下さい。

◆ 3.骨・椎間板が原因の腰痛
 骨粗鬆症の高齢者に多い、腰椎の圧迫骨折による痛みは激しく、動くことができない 場合が多いです。いわゆる腰曲りの原因です。腰を丸めて前かがみになり、なんとか歩 けるようになれば治療開始です。それまでは安静にしてください。鍼灸治療によって痛 みは軽減しますが、日常生活に支障がない程度になるには、最低3週間は必要です。圧 迫骨折とは、腰椎が潰れて、それを支えていた靱帯や筋肉が傷つき痛みを起こします。 潰れてしまった骨は治りませんが、その周りの組織が回復すれば、痛みはなくなります 。 やはり加齢によって腰椎が変形するものに、脊柱管狭窄症や変形性脊椎症がありま す。

◇ 脊柱管狭窄症 は、腰椎後部にある神経の通り道である脊柱管が変形し狭くなり、そ こを通る神経を圧迫することによって、腰や下肢に痛みを発します。数十メートル歩き だすと、痛みと脱力を感じ歩行困難になるが、しゃがんで休むとまた歩けるようになる のが脊柱管狭窄症の特徴です。排尿や排便の障害を起こすこともあります。

◇ 変形性脊椎症 は、加齢によって椎間板や椎体が変形したり、骨を支える靱帯が肥厚 して、腰痛や下肢神経痛を発します。起床時や動作開始時に痛みが強いのが特徴です。
 脊柱管狭窄症および変形性脊椎症では、痛みや症状の緩和は出来ますが、完治は困難 です。

鍼灸治療を定期的に継続していくことによって、症状の進行を抑え、歩行出来る ように調整していきます。

◎ 自分でできる即効指圧
   その28 腰痛・坐骨神経痛
座骨神経痛  膝の裏側にある委中(いちゅう)を指圧します。膝の裏側にある太い筋を 弾くように指圧します。
腰痛  臀部にある環跳(かんちょう)をお尻の中心部に向かって指圧します。自分では 難しいので、横臥して圧痛が無くなるまでよく揉み解してもらいましよう。

 椎間板ヘルニア は、20才代に多く、ほとんどが40才以下での発症です。椎間板か ら髄核がはみ出し、坐骨神経を圧迫して痛みを発します。動けない程の激しい痛みで、 太ももなどに知覚鈍麻を起こすこともあります。最低三日間は絶対安静です。いくらか 動けるようになったら治療開始です。手術をする方法もありますが、鍼灸治療で治せま す。

◆ 腰痛への基本的対処法
 腰痛にはいろいろな原因がありますが、全ての腰痛に対する心得をまとめると次のよ うになります。
 1.二本足直立歩行が腰痛のはじまり。
 2.腰痛時まず横になり休息を。
 3.腰がおもいだるいレベルで腰痛治療。
 4.足先の冷えと体の硬さを感じたら要注意。

 ★ 「休診のお知らせ」
11月3日(日)から11日(月)まで。
ローマでの鍼灸国際学会に参加してきます。

 ★ 「お知らせ」
屠蘇散を12月からご用意します。
年始の祝杯にお使いください。


光和堂通信 第1号1995年秋季号(Vol.1,No.1)1995.10.31
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