光和堂通信 第30号2003年春季号(Vol.8,No.3)2003.05.08
[予防と早期治療のために]

 光和堂にも春が来ました。新しい治療室が完成し、広くパッと明るくなりました。 トイレも広く手すりが付き、膝が痛い方でも安心して使えるようになりました。治療 スタッフも増え、後は皆様のご来院を待つばかり、お疲れや体調の気になる方はお早 めにどうぞ。

◆ 油断できない糖尿病

 糖尿病は漢方では「消渇病」(しょうかつびょう)と呼び、古くからその存在は知 られていました。のどの渇きと小便の異常を中心にその病態を捉えています。現代で は血液検査によって血糖値から糖尿病を診断しているので、ほとんどの場合で症状が 現れる前に見つかるようになりました。むしろはっきりとした自覚症状が出た時には、 糖尿病はすでに進行し、合併症が起っていることが多くあります。一度合併症が発症 すると、血糖値を下げるように努めても、合併症の進行をくい止めることは難しくな ります。
 自覚症状がない方も多いので、検査数値だけで、自己管理していくのは、根気と精 神力が必要です。しかし、多少の高血糖状態でも長く続くと、さまざまな合併症を引 き起こす油断のできない病気です。是非とも血糖値とヘモグロビンA1c(エーワン シー)の数値を指標に食生活や運動、服薬などによって気長にがんばっていきましょ う。

光 和 堂 来 院 番 付
 1月〜3月
漢 方 薬     鍼 灸      
 1 
 2 
 3 
 4 
 5 
循環障害 
風邪   
腰下肢疾患
鼻炎   
婦人科疾患
腰下肢疾患
項背部疾患
筋肉疾患 
関節疾患 
婦人科疾患
 6 
 7 
 8 
 9 
10 
関節疾患 
糖尿病  
免疫系疾患
神経系疾患
疲労   
脳血管障害
循環障害 
神経系疾患
免疫系疾患
風邪   

◇ 厄介な合併症

 糖分は、体にとって一番大切なエネルギー源なのですが、有り余っていると悪いこ とを始めます。余分な糖分はまず肝臓に蓄積されますが、その調節がうまくいかない と、血液中に残り、血管や神経に悪影響を及ぼします。糖分の多い血液は、ドロドロ してきて流れが悪く、細い血管などは詰まりやすくなります。人間の体で、最も細い 血管が集まっているところが、目の網膜と腎臓の糸球体です。
◎ 民間薬 その18 『タラ木』(たらぼく)

インシュリン作用があり、
血糖値を下げる。また、
利尿効果もあり、むくみや
腎臓病の予防にもよい。

◇ 目にくる合併症―網膜症

 眼底にある網膜は、眼に入ってきて映像を受信するスクリーンです。そこに写し出 された映像を視神経が捕らえ、脳へ刺激を伝達し、映像を認識しているのです。網膜 という呼び名からも分かるように、映像を受信するこのスクリーンには、無数の細い 血管と神経が網の目のように張り巡らされています。
 血糖値が高い状態が続くと、このような細い血管が詰まりはじめ、次第に漏れ出血 します。その初期である単純網膜症では、まったく自覚症状がありません。糖尿病と 診断され、5〜10年後に現れます。
 さらに進行すると、細い血管から出血した血液が固まり、網膜に沈着して斑点を作 ります。これを前増殖性網膜症と呼びます。この頃になるとやや見にくい所が現れま すが、視力はさほど低下しません。
 さらに進むと、詰まり使えなくなった血管を補うように、新しい血管が発生します。 これによって網膜は一時的に救われるのですが、それらの新生血管までも詰まり破裂 し、網膜は出血と血の固まりがいたる所で起り、ついには網膜も力尽き、眼底から浮 いて剥離の危機に曝されます。このようになると、「ごみがたくさん飛んでいるよう に見える」、「赤いカーテンがかかっている」や「墨を流したような黒いものが、目 の前を降りてくる」などの症状が現れます。このような状態を増殖性網膜症と呼びま す。このようにはっきりとした症状が現れる頃は、視力低下や失明の可能性もあり、 非常に危険な状態です。


漢方薬局  光和堂  鍼灸治療院
【受付時間】火・木・日曜は午前部のみ
午前部:10〜12時/午後部:2〜7時
【月曜・祝日休診】

◇ 透析に至る腎症

 腎臓は、血液中に溜まった老廃物を漉し取り、排泄する仕事をしています。漉し取 る場所を糸球体と呼び、細い血管がたくさん集まり、フィルターを形成し、そこでタ ンパク質や糖分など体に必要なものは回収し、それ以外の不要物を排泄します。
 血液中の糖分が多くなると、血液がベトベトして粘度は高くなります。すると糸球 体の細い血管は詰まり始め、その詰まりが広がると糸球体内の圧力は上昇し、遂には 破裂します。フィルターに穴が開き、網の目が粗くなり、体に必要なタンパク質や糖 分まで通り抜け尿に出てしまいます。これがタンパク尿あるいは糖尿です。このよう になると腎臓の糸球体は、ざるのように何でも通し腎臓として機能しなくなります。 透析しないと体内に溜まった老廃物を排泄できない、腎不全の状態です。

◇ つらい神経障害

 血液中にブドウ糖が多いと、その代謝産物であるソルビトールという成分も増えま す。すると循環が悪い手足など末梢に溜まり、これが神経細胞を侵します。ダメージ を受けた神経は、しびれや痛みあるいは知覚過敏や鈍麻を起こします。
 運動神経が障害を受けると、筋力低下、筋萎縮やこむら返りが起こります。自律神 経が障害を受けると、発汗異常や便秘、排尿障害、勃起不全などが発生します。さら に免疫力が低下し、細菌感染に弱くなり、足先に潰瘍や壊疽が起こりやすくなります。

◇ 漢方で治す糖尿病

八味地黄丸(はちみじおうがん) :副腎に働きかけ、糖分の代謝を促進し、血糖値を下げる。さらに、末梢血行を改善 し、網膜症、腎症、神経障害いずれにもよい、糖尿病合併症の予防に是非どうぞ。
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう) :口渇で小便が多い人、あるいは自覚症状がなく、ただ血糖値が高い人によい。
竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう) :痩せていて、食べても太らないのだけど、血糖値が高い方。あるいは、急に体重が 減りだるく、のどが渇き多尿の人に。

◎ 自分でできる即効指圧 その30
  糖尿病性神経障害
こむら返り  膝の外側でおよそ3cm下にある陽陵泉(ようりょうせん)を強く刺激 します。この付近をもみほぐしておくと、足つれの予防にもなります。
足先しびれ  足の指の付け根にある左右合わせて8つの穴である八風(はっぷう)を 指圧します。お灸はさらに効果があります。

◇ 実はこんな症状も糖尿病から・・・ 鍼灸治療はこれらの症状を軽減させます!

<患者像1>75才。男性。血糖値180。インシュリン使用。両方の太ももと ふくらはぎがつれ、特に明け方ひどい。又、太ももの外側の神経過敏あり。
 この患者さんは、週に1回のペースで鍼灸治療をしています。以前は、歩いている と太もも〜ふくらはぎにかけてだんだん硬くなり、歩けなくなってくるという状態で したが、治療を続けていくことにより、筋肉が柔らかくなり歩行が楽になってきたそ うです。今では足のつれはほとんどなく、雪の寒い日でも足の調子は良かったとの事 です。

<患者像2>65才。女性。血糖値200。インシュリン使用。右親指のバネ指、 肩〜背中の張りと痛みで来院。
 この患者さんは週に2回で鍼灸治療をしています。バネ指には半米粒大のお灸を熱 が通るまですえて、硬くなった腱鞘を柔らかくさせます。肩〜背中の張り・痛みには、 鍼と温灸を使い循環を良くさせるよう治療をしています。  バネ指にはお灸はとても良く効くようで、治療後、指の関節の圧痛はだいぶ取れ、 動きが良くなったとの事です。

★ 『お知らせ』
6月8日(日)鍼灸の学会参加のため休診します。


光和堂通信 第30号2003年春季号(Vol.8,No.3)2003.05.08
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