◆ 人体ワイヤーの錆(さ)び=バネ指腱鞘炎
バネ指は弾発指(だんぱつし)とも呼び、腱鞘炎で炎症の激しい疼痛期を過ぎ慢性
化した時期、あるいは激しい症状を経過せず発症する場合もあります。指を曲げて
伸ばそうとすると引っ掛かり、バネを弾いたようにカクンと動きます。腱を自転車
のブレーキ・ワイヤーにたとえると、腱鞘はワイヤーカバーです。完全に錆びつい
た状態ではブレーキ・レバーが動きませんが、部分的に錆びた状態では抵抗があり
ますがまだ動きます。これがバネ指です。
ワイヤーである腱鞘が錆びる原因は、疲労物質の蓄積が考えられます。人類は直
立歩行を始めてから手を器用に使うことによって進化したといわれています。それ
だけ日常生活の中で手を使わないことはありません。筋肉や骨などすべて生きてい
る人間の体では、手先だけでも動かせば必ず老廃物が発生します。ブドウ糖を消費
してエネルギーを得ている筋肉は、その代謝産物として乳酸などを老廃物として産
生します。老廃物は血液の循環によって肝臓で代謝され腎臓で尿中に排出されます。
しかし、加齢とともに血液循環や新陳代謝が低下し、老廃物の輸送力や解毒力が減
退し、筋肉や腱付近に老廃物が蓄積しやすくなるのです。これが、バネ指タイプの
腱鞘炎が中年期以降に多く発症する主因です。また、糖尿病や慢性肝炎、痛風など
の病気や透析中の方はやはり老廃物の運搬や代謝に問題が生じ、バネ指や腱鞘炎が
起こりやすいです。
◆ 肘の痛み‐上腕骨(じょうわんこつ)内側(ないそく)(外側(がいそく))上顆炎
(じょうかえん)
いわゆるテニス肘や野球肘と呼ばれ、スポーツによって発症することが多いので
すが、日常動作でも起こります。フライパンを握ったり、雑巾を絞ると肘の外側や
内側で痛みが起こるのです。ちょっと使い過ぎかなと思いしばらく様子を見ても治
らない場合は、この上腕骨内側(外側)上顆炎です。腕の使い過ぎが主な原因ですが、
休息してもなかなか治らない背景には、この病気でも人体ワイヤー(腱)の錆びが関
与しているからです。
腕を使うことによって筋肉に疲労物質が産生され、本来なら血流にのって代謝さ
れるはずの老廃物が肘付近に蓄積していきます。そこが上腕骨内側(外側)上顆と呼
ばれる部位で、筋肉が腱となり上腕骨に付着しているところです。この腱と骨の付
着部分である骨膜にも炎症が至り、脹れや痛みを生じるのです。
◆ 錆び落しに鍼灸を!
腱鞘炎やバネ指、上腕骨内側(外側)上顆炎は、鍼灸を上手に利用して早く治すこ
とができます。発症して間もない急性期には冷やすことと鍼を主に使います。一ヶ
月以上の場合は鍼とお灸を利用します。鍼は腱付近の錆びを突付き落し、お灸がそ
の錆びを血流にのせて解毒代謝を促進します。根気よくこの作業を繰り返していく
と、少しずつ痛みが緩和され、指や腕の動きがスムーズになっていきます。